2017年12月9日(土)に『オリジナル憲法草案を作ってみよう!』と題したイベントを板橋で開催しました。結論として、みんなは「将来世代へ向けて、いかに自立できるか?」という議論を憲法に求めているのではないか?と考えました。

今回のイベントに参加したのは、15名でした。チャレンジングなワークショップでしたが、結果的にうまくいったと思います。ここでは、このワークショップをやろうとした理由、ワークショップの内容、感想などについて書いていきます。

そもそも、なぜこの「憲法草案つくってみる」というワークショップをやろうと思ったのか。それは憲法が、面白いからです。僕は、会社を辞めて憲法草案を作ってみました。自分なりの使命感でやった側面もありますが、憲法を学んでいくうちに「えっ、何これ?」と新しい発見や驚きが積み重なったので、知らないうちにグイグイと憲法にめり込んでしまったことも大きく関係しています。

憲法とは、やわらかく言えば、その国のルールや目標が書いている文章です。「将来はあんな風になったら良いな…!」「今の問題は、こうすれば解決するんじゃないかぁ〜」と希望に胸を弾ませ、社会の未来をイメージしながら、言葉を紡いでいく作業は実に面白いです。感覚的には、旅先の風景や食べ物や文化などをイメージしては、旅の計画をワクワクしながら組み立てるのと似ているんじゃないかと思います。

僕は、憲法をシンプルに捉えていたので、とても親しみを覚えていました。けれども、ワークショップの冒頭で憲法のイメージを参加者に聞いてみると「カタイ」「抽象的」「自分とは関係ない」という意見が多かったです。確かに学校の教育では、憲法と自分たちの生活を結びつけて考えることは教えられていません。「国民主権」「基本的人権」などの概念を教えられても、それを踏まえて生活に活かせなければ、それは死んだ知識を教えられているようなものです。憲法の精神を復活させるためにも、私たちとの繋がりを作り出すことが必要です。

また、憲法の本を開いても、難しい言葉が繰り出され、分かったような分からないような感覚になります。この通り、憲法と私たちには距離感があります。この距離感が、憲法をジブンゴトのように捉えられない原因ではないかと考えていました。たとえ正論であったとしても、自分とは関係ないものを「考えよう!」と言われても、心に響きません。人々は自分が興味があることで忙しいのです。

僕も憲法を勉強し始める前は、憲法すらまともに読んだこともなく、自分の生活とは関係ないし、つまらない分野だと思っていました。けれども、自分でゼロから憲法を作ることで身近になりました。スイートな言い方をすれば、憲法の面白さに魅せられたというか、惚れてしまったのです。ならば「みんなも憲法をDIYすれば、憲法を身近に感じるのではないか?」と考えました。

憲法の勉強会やイベントに参加したことがありますが、恐らく「憲法草案を作ってみよう」というワークショップ形式のイベントは、日本でもかなり珍しいのではないかと勝手に思っています。

今回のワークショップは、前半の憲法ミニ講座と後半のワークショップの2部構成でした。

憲法ミニ講座:30分
憲法ワークショップ:90分

憲法ミニ講座は、憲法を全く知らない人を対象にした簡単な内容で、後半部分の憲法草案を作るワークショップに繋がるような話にカスタマイズしました。なるべく専門用語を使わずに平たい言葉や例え話をするように心がけました。憲法ミニ講座の内容については、後にこのブログで公開したいと思います。

そして、ワークショップのタイムテーブルはこんな感じでした。

①グループ分け:5分
②自己紹介・ミニ講座の感想:5分
③自分で日本の現状や問題を考える:5分
④みんなで日本の現状や問題を考える:15分
⑤休憩:5分
⑥各国憲法の読み込み:15分
⑦各国憲法の感想をシェア:10分
⑧自分で憲法草案と日本の未来を考える:10分
⑨みんなで憲法草案と日本の未来を考える:20分
⑩グループで発表:10分

今回は、参加者が僕を除いて15名だったので、4グループに分かれて行いました。そして、ワークショップの冒頭にゴールを提示しました。

『今の日本は、○○○である。△△△という新しい憲法があれば、未来は□□□になる。』

この「○○○(現状や問題点)」や「△△△(解決策)」「□□□(実現したい未来)」を各グループで話し合ってもらうようにしました。いきなり憲法草案を作ってみて!と言われても難しいので、今回は問題解決型で憲法を考えてもらうようにしました。

また、ワークショップでは「その新しい憲法を通して、どんな未来ができるのかを話してください」と伝えました。憲法とは、あくまで手段や方法なので、実現したい未来の社会像を話し合ってもらいました。憲法や社会の問題について考えることが慣れていない参加者を想定して、グループで話し合う前に、個人で考えを整理したり、考えを書き出すための個人ワークの時間を設けました。

今回は憲法草案を作るのが目的のワークショップだったので、参考資料として各国の憲法を用意しました。イタリア、スウェーデン、韓国、フィリピン、スイス、ブラジルなどです。今回は身近に考えられそうな「教育」「環境」「労働」「平和&戦争」というジャンルで世界の憲法を用意しました。

最初は、話し合いがちゃんと進むのかなという不安がありました。僕は憲法について取り組むときは、思想やイデオロギーは問わず、みんなウェルカムというスタンスでやっているので、いろんな考えや背景の人が来ます。正直に言うと、この参加者の多様性が、ワークショップ進行する上での大きな障害になるのでは懸念していました。けれども、グループに分かれてワークショップを開始してみると、僕の不安はそっちのけで、みんな楽しそうに対話を繰り広げていました。僕はワークショップの進行のために、グループの中には入れませんでした。みんな楽しそうだったので、残念でなりません・・・!

自分たちの未来という共通のテーマをお題にすれば、現在のスタンスや立場の違いは、さほど問題にならないというありがたき教訓を得られた瞬間でもありました。

ワークショップの話に耳を立ててみると「この国に旅行に行ったことがあるけど、憲法に書いていることと実態が全然違う」「この国のこの憲法の条文は、こういう歴史的な背景があったからだと思う」「そもそもヨーロッパには、教育と医療で金儲けをするという発想がない」「憲法に色がないから、カラフルな憲法が必要・・・!」など、鋭い指摘や面白いアイディアがたくさん出ていました。

最終的には、どんな憲法ができたのか?僕が覚えている範囲で書いていきます。発表内容とは、少しズレがあるかもしれません。

グループ1『カラフル憲法』

今の日本は、やり直しがきかない社会である。年齢、国籍を問わずに学べる権利と環境を保障するという新しい憲法があれば、未来は豊かな国になる。そうなると、「人間らしくゆとりを持った労働」や「人としての個性を認め合う多様な生き方」が実現できる社会になる。

人間らしさや個性や多様性を反映した憲法という意味で、「憲法に色をつけよう!」「カラフルな憲法」というアイディアが出ていました。

グループ2『永久自立憲法』

このグループでは、海外経験が多い人と海外経験が少ない人がいました。様々な角度からの意見が出ましたが、共通するキーワードは「自立」です。自立とは、個人が主体的に考えられるような教育をすること、食料の自立などを含みます。そもそも米軍基地がある時点で、今の日本は国として自立しているとは言えません。なので、永久自立憲法があれば、日本は自立した国として世界に向き合えるのではないか。

このグループでは、戦争の危険性を身近に考えることができるという文脈で、徴兵制があっても良いのではという意見が出ました。

グループ3『将来世代の憲法』

今の日本は、現在地しか見えていない。過去の歴史も知らないし、将来世代に対する責任も感じられない。だから、過去・現在・未来という視点で考えられる憲法が必要。そんな憲法があれば、将来世代への責任をきちんと果たせるような社会になる。

このグループでは、「権利」という曖昧な言葉はなくして、「国の責任」と書き換えてしまえば良いのではというアイディアもありました。

グループ4『利他的憲法』

今の日本は、私欲的である。過去の歴史から全く学ばずに成功体験ベースで楽観的すぎる。そのため、国や国民に問題の本質を考えるための哲学がない。そういったことが原因で、国民の政治意識の低さに繋がっているのではないか。そのため、世代間倫理を取り入れたりするような利他的な憲法が必要である。そうすれば、人々が楽しく暮らせる社会になるのではないか。

このグループでは、日本はアメリカの属国ではないかという話や、利他精神のところでは陽明学というキーワードも出たそうです。

グループ発表は、各グループ3分くらいでした。発表では出なかったたくさんのアイディアや議論がグループワークのプロセスの中に生まれていたんだろうなと思います。

かなり面白い憲法のコンセプトが出たなと率直に思いました。大切なのは、コンセプトです。今回は、憲法草案の条文を書き起こすまでには至りませんでしたが、コンセプトが決まれば具体的な条文もイメージしやすくなると思います。何よりワークショップで一番大切にしていた「どんな社会を作りたいのか?」が、それぞれのグループで出て来たのが良かったです。

全体の発表を通して共通していたのは、「自立」「将来世代」という二つのキーワードだったと思います。今回参加した人は、「将来世代へ向けて、いかに自立できるか?」という議論を憲法に求めていたんだと発見しました。逆に言えば、今までの憲法議論は、「改憲VS護憲」「右翼VS左翼」「憲法9条」のような決まり切ったテーマしか扱われてこなかったのだと思います。しかし、そうしたテーマ設定自体が、人々の主体性や創造性を抑圧してきたのではないでしょうか。憲法の面白さや可能性を、排除してきたのではないでしょうか。

人々は別に対立を求めている訳ではなく、より良い未来に向けて何をするべきなのかという建設的な議論をしたいのだと思います。キチンとした問題設定をし、対話できる場所を用意すれば、みんなが元々持っている創造性を発揮してくれます。今回参加してくれた15名は、そのことを楽しく証明してくれました。

ともあれ、良いムードで初めての憲法ワークショップを終えることができました。ワークショップに特に協力してくれた、間中りんぺいさん、桑本巌さん、アーヤ、神谷さんに、この場を借りてお礼をしたいと思います。ありがとうございました。

今後も憲法ワークショップをたくさん実施したいと思います。要望があれば、積極的に協力するので、声をかけてください。

つづく。