1月20日に『食と憲法』というテーマで憲法ワークショップを行いました。「食・・・憲法・・・?」と、珍しい組み合わせに不思議に思うかもしれませんが、食と憲法には、共通点があります。それは自分たちの暮らしの根っこに関わっていることです。のちに紹介しますが、最近の世界の憲法では、食に関する記述がそこそこあります。

人間の細胞は、3ヶ月で入れ替わるそうです。となると、今の自分の身体は3ヶ月前に自分が食べたものでできています。食べるとは、自分たちの身体を作ることです。一方で、憲法は、どうでしょうか。社会にはいろんな法律がありますが、その王様に当たるのが憲法です。近代の憲法の考え方では、憲法に違反する法律を作ることはできません。憲法とは、僕たちの社会のグランドデザインが書かれています。その意味では、食も憲法も僕たちの生活の基礎を形作っていると言えます。

とは言うものの、憲法ってスゴいお堅いイメージを持たれています。雲の上の存在というか、浮世離れした存在のような感じです。僕も憲法を知る前は、そんなイメージを持っていたので無理はありません。憲法をふらっと気軽に話すことができる人が増えれば良いなと考えていたところ、協力してくれる友人が登場しました。

今回のイベントは、駒込駅の近くにあるナーリッシュという自然食レストランの場所をお借りしました。ナーリッシュでは、体に優しい自然栽培やオーガニックの野菜を使った自然食を提供しています。知人がこのお店で働いており、憲法のイベントに場所を使ってもよいと声をかけてくれました。ワークショップの打ち合わせしている時、せっかくこだわりのある料理を出すお店でやるのだから、ワークショップのテーマも「食」に絡めようという話になりました。それに美味しい料理を食べながらやれば、和やかな雰囲気で憲法を触れることができるのではないかという思いもありました。

イベントの当日は、最初に30分で僕が「憲法ミニ講座」と題して僕が考える憲法のキホンを話しました。その後に「日本国憲法に食に関する記述があったら何が書かれてるか?」という問いを参加者に考えてもらいました。

僕が実施する憲法ワークショップの大枠は次の通りです。

①憲法ミニ講座で憲法のキホンを知る
②あるテーマで日本の問題点や課題を考える
③テーマに関連した世界の憲法を知る
④②と③を元に「この問題を解決するために、どんな憲法あれば良いか?」を考える

この流れであれば、憲法の基本を知り、世界の憲法を学び、主体的に問題解決のアイディアを考えるなど、創造と学びの機会を得ることができます。今までワークショップを3回やってきましたが、憲法の事前知識などなくても一切問題ありませんでした。むしろ新しいアイディアを考えるプロセスがあるので、頭の柔らかい人のほうがより楽しめると思います。他に人でも気軽に実施できるように憲法ワークショップの作り方を今後まとめて行く予定です。

今回のワークショップで使った食に関する世界の憲法を紹介します。なお英語を自分で翻訳したものなので、多少違和感のある日本語かもしれませんが、ご容赦ください。

エジプト 第79条 2014年

市民は、健康、十分な食料と清潔な水に対する権利を持つ。政府は、全ての市民に食糧を提供しなければならない。また、政府は、持続可能な方法で食の主権を保障し、世代間の権利を守るために、農業的な生物多様性と地域の植物を保護しなければならない。

エチオピア 第90条 1994年

国の財源が許す限り、政府の政策は全てのエチオピア人に公衆衛生、教育、清潔な水、住居、食料および社会保障へのアクセスを提供することを目指す。

ハンガリー 第ⅩⅩ条 2011年

1. 全ての人は、身体的かつ精神的な健康に対する権利を持つ。

2. ハンガリーは、第1項に規定する権利の実現を、遺伝子組換え生物を使用しない農業、健康的な食料及び飲料水へのアクセスの保障、労働の安全および衛生の供給の組織化、スポーツおよび規則的な身体訓練の支援、ならびに環境保護の保障により促進する。

グアテマラ 第51条 1985年

政府は、未成年および年配者の肉体的、精神的および道徳的健康を保護する。政府は、彼らに食料、健康、教育、安全、社会保障に対する権利を保障する。

ジンバブエ 第15条 2013年

政府は、次のことをしなければならない。

a. 十分な食料の生産と貯蓄の人々への奨励

b. 十分な食品保護の体制の維持

c. 義務教育およびその他の適切な方法で、十分かつ適切な食生活の奨励と促進

ホンジュラス 第123条 1982年

全ての子どもは、健康に発育する権利を持
ち、出産前には特別な保護が与えられ、子どもと母親には、食料、住居、教育、レクリエーション、エクササイズ、スポーツおよび十分な医療サービスが保障される

ホンジュラス 第347条 1982年

農業生産は、農業生産者と消費者への公正な価格によって十分に供給できるという方針によって、ホンジュラス人口の食料需要を満たすことを目指さなければならない。

モルドバ 第37条 1994年

全ての人間は、生態学的に安全かつ健康な環境に住み、健康な食品を消費し、無害な家電製品を使用する権利を持つ

ネパール 第36条 2015年

1. それぞれの市民は、食に対する権利を持つ。

2. 全ての市民は、食料不足による国家の貧困から保護される権利を持つ。

3. 全ての市民は、法律の定めるところにより、食の主権に対する権利を持つ。

ニジェール 第146条 2010年

公的な政策は、食料供給の主権、持続可能な発展、社会的なサービスへのアクセスおよび生活の質(Quality of Life)を促進させなければならない。

ウクライナ 第50条 1996年

全ての人には、環境の状況、食品と消費物の質の情報へ自由にアクセスする権利を持ち、そのような情報を広める権利を持つ。誰もそのような情報を隠蔽しない。

カーボベルデ 第86条 1992年

父と母は、結婚および婚外を問わずに自らの子供に食料、保護、教育の援助をしなければならない。

フィジー 第36条 2013年

政府は、各人が貧困からの自由、十分な量と質を伴う食料、および清潔で安全な水を得る権利を実現するための対策を、可能な財源の範囲内で、行わなければならない。



日本の食に関する問題を話し合ってもらいましたが、「種子法の廃止」「食料破棄(フードロス)」「遺伝子組み換え食品」「農薬や食品添加物」「自給率の低さ」などのキーワードがあがっていました。それでは、これらの問題を解決するために、どんなアイディアが出てきたのか見て行きましょう。

食に関する憲法草案

全ての人は健康に暮らす権利を有す。そのために国は食の安全を守り、地域の特性を活かした豊かな食文化を持続させる義務がある。

※憲法草案制定に合わせて、次のような関連法案ができる。

【関連法案】生物多様性法、フードマイレージ制限法、オーガニック主義法、農作業義務化法、フードロス禁止法、都市農業優先法

〇〇憲法草案<食>

1. 国は、国民人口をまかなう食料自給率を上げるために、最大限努力する。(具体的数値は毎年調査し、100%を目指す)

2. 国は、国民が安全な食料を摂れるよう、食の安全を確保する義務がある。(土・水・種)

3. 国は、食糧となる動植物の福祉を考えることを生産者に義務づける。

〇〇憲法 食草案

・口に入れるものが自分の身体をつくるので、食べて幸せになるものを選んだり作ったりできるとサイコー。

・土いじりをしたり、田植え、農作業体験をすることで、生きることと食べることが直結していることを学ぶ機会を作る。(国や自治体や学校・教育機関が)

食は未来の自分をつくり、生きる喜びにつながるので、遺伝子組み替え生物・食品添加物はできうる限り排除する。人はみな多様な食物・健康的な食糧を地産地消で享受できる。

食に対して責任を持つ。(水道の水は安全か?/農薬は誰のため?何のため?/食べ続けて身体にどんな影響があるのか?食品メーカーは自分で実験して、OKが出れば、販売する。)

→自分が食べたくないものを作らない、売らない、おしつけない。人を良くするために食べる。

現在の日本は「情報いっぱいありすぎ、あふれるくらい!」なので、「社会保障へのアクセス」をまずしやすくしよう!そこからじゃないと肉体の健康・精神の健康がスタートしない。そこに目を向けられれば、必然的に食の安全にいく!

憲法にある、ひとは幸わせを希求する権利があるを基本にすえて考えていく。地球環境に配慮した安全な食料を生産することが、幸わせに通じることになる。できるだけ野菜を自給できるような環境づくりができるようにする。

全国民は、生態学、物理学、化学的に安全かつ健康になる形の環境に住み、また健康的になる食品を消費し、害のない生活を送る権利を有する。

以上です。

やっぱり未来を考える楽しいですね。こんなふうにワクワクしながらポジティブなエネルギーを政治に注入できれば、問題解決のスピードも上がっていくのではと思いました。ナーリッシュで美味しい料理を食べていて、「自分が食べているものは、商品である以前に生き物だったんだなぁ」と、ふと思いました。

つづく。